腎臓病食の豆知識

腎臓病食のアドバイス

腎臓は人間の腰のやや上、背骨の両脇の少し離れたところにあります。左右にひとつずつある手に収まるくらいの握りこぶし大の大きさの臓器です。 腎臓の働きは一言でいうのであれば「体のろ過装置」です。
人間の体は至るところに血管が通っています。心臓から全身に送られた血液は全身に行きわたり、全身の細胞や臓器を経由して再び心臓に戻ります。その際に経由する臓器のひとつが腎臓です。血液は腎臓を通るときに血液内の不要な老廃物をこしとります。こしとられた老廃物は尿となって膀胱から体外に排出されます。

腎臓は血液をこし、体の中の老廃物を取り分ける役割をしているのです。
しかし、腎臓が悪くなるとその取り分けが上手にできなくなり、たんぱく質や赤血球が尿に混ざるようになります。また水分の排泄が上手にできなくなり体の中の水分が多くなりむくみなどの症状が起こってしまうこともあります。

腎臓病に対して食事で気を付けること

腎臓病食とはこうした症状を緩和するため、もしくはこうした症状になったときに腎臓に負担をかけないためにとる食事のことです。
腎臓病食は症状によってガイドラインに定められている制限の量が変わってきます。腎臓病食では「たんぱく質の制限」や「食塩の制限」「カリウムの制限」、「リンの制限」などを行います。

たんぱく質の制限

腎臓病食では「たんぱく質」の摂取が制限されることがほとんどです。
たんぱく質とは水分を除いた人間の体の半分弱を占めている物質です。肉類、魚介類、卵類、大豆製品や乳製品などに含まれている筋肉を付けるためにとったほうが良いものを想像すると分かりやすいでしょう。
また、運動選手や体を鍛えている人が飲んでいる「プロテイン」は英語でたんぱく質のことを指しています。

たんぱく質は筋肉や臓器、肌、髪、爪、ホルモンや免疫物質などを作ります。しかしたんぱく質は体内で分解する際に尿素や窒素を発生させます。過剰にたんぱく質を摂取すると尿素や窒素をそれだけ腎臓が大量に処理しなければならないことになってしまいます。そのため尿素や窒素の処理で腎臓に負担がかかり、機能を低下させていた腎臓がさらに悪化する可能性があるのです。

たんぱく質は体を作る物質であるため摂取しないわけにはいきません。病状によって適切なたんぱく質の摂取量は異なります。また体の大きさによってタンパク質は必要量が異なってきます。例えば最もたんぱく質の摂取の目安が少ない「急性腎炎症候群・急性期」の場合体重1kgに対して0.5gしか摂取することができません。

例・体重60kgの場合 60kg×0.5g/kg=30g
一方で糖尿病腎症の場合、第2期の早期腎症なら1kgあたり1.0~1.2gと前の例と比較すると2倍のたんぱく質を摂取することができます。
※ 数字は日本腎臓学会編「腎疾患の生活指導・食事療法ガイドライン」のものです。
たんぱく質の摂取を制限するために単純に食事の摂取量を減らすという方法をとってしまうと、エネルギーが減ってしまい通常の食生活を行っていたときに維持できていた健康が維持できなくなってしまうということもあり得ます。食事制限とは言えども、健康な生活を行うためにはその他の栄養素を損なうことなくたんぱく質の摂取量を抑制し、エネルギーを適正に摂る必要があるのです。

食塩の制限

腎臓病の際に制限しなければならないものとして食塩があります。
塩分はわたしたちの体に欠かせないものです。私たちが主に塩分を摂取しているのは調味料があります。そのため腎臓病食は調味料の使用を制限して作らなければなりません。また肉類、魚介類、穀物などにも塩化ナトリウムが含まれています。調味料を制限しているからと言ってそうした食品を過剰に摂取してしまうと、塩分の過剰摂取になってしまう可能性があります。
塩分のコントロールはなかなか難しく、今までたくさん塩分を取っていた人が急に塩分の摂取量を減らすと、味がしない、食べた気がしないなどの感想を持ってしまうこともあります。
塩分の過剰摂取は健康な状態であっても体に悪影響を及ぼします。塩分は人間の体の水分の割合をコントロールするために利用されているからです。

ひとつの例として血液と塩分の関係があります。人間の血液内の塩分の割合は水1?に対して塩分8g。人間の体は塩分を多く摂取するとその塩分に対応して水を大量に摂取しようとします。体に蓄えられた水分が多くなると体がむくんでしまいます。通常の場合には食塩や水は体内の量が適切になるように速やかに排出されます。
しかし、腎臓病で腎機能が低下している場合、水分や塩分の排出機能が弱くなっているためなかなか水分や塩分を排出することはできません。体内の水分が増加することで、その水分を循環させるために血圧が高くなってしまいます。高血圧は心臓と腎臓にさらに負担をかけてしまうのです。
また腎臓の状況によっては尿たんぱくの量が増加してしまいます。たんぱく質は先にも挙げたように腎臓にダメージを与えるものです。大量の尿たんぱくが排出されることによってさらに腎臓の機能が低下する可能性があります。

塩分は体重に関係なく病状に合わせて制限の量が決まっています。一般的な食生活であっても、塩分の一日の摂取量は10g以下が好ましいと言われています。腎臓病の場合には7g以下という制限があります。急性腎炎症候群の場合には3g以下という厳しい制限になっています。

カリウムの制限

腎臓病の段階が進んでくるとカリウムを制限することもあります。
カリウムは体内のさまざまな箇所にあるミネラルです。人体におけるカリウムの働きは体の浸透圧をコントロールすることです。
浸透圧というのは水分の濃さをコントロールする機能だと考えればいいでしょう。人間の体はこのカリウムの量をコントロールすることによって体の中のさまざまな箇所の水分の濃さをコントロールしています。カリウムの量は多くなりすぎても小さくなりすぎても体の機能に異常をきたします。例えばカリウムが体内に少なくなってしまうと筋肉の収縮や自律神経の失調、不整脈などの症状を引き起こしてしまいます。
夏場などに大量の汗をかいてしまったときに起こる症状には、カリウム欠乏から発生するものもあります。

反対にカリウムが過剰に体内に残ってしまった場合には高カリウム血症が起こります。高カリウム血症は、嘔吐などの胃腸症状、不整脈などを引き起こします。あまりにカリウム値が高くなってしまうと不整脈、さらにカリウムが高くなると心停止を起こすことがあります。またそこまでの症状が発生しなかったとしても心臓の機能に異常が発生することもあります。

通常の体であれば、過剰に摂取したカリウムは尿とともに排出されます。しかし、腎機能に異常があるときには上手にカリウムが排出されなくなるため、体の中にカリウムが多く残ってしまい高カリウム血症になりやすい傾向にあります。
腎機能に問題がある場合には、カリウムが体外へ上手に排泄されず体内にどんどんと溜まっていってしまいます。そのため最初からカリウムの摂取を制限する必要があるのです。

腎機能に問題がある場合に病院で良く指導されることとして、生の果物や野菜を食べることは避ける、というものがあります。
生の野菜には非常に多くのカリウムが含まれているからです。

野菜は水にさらしたりゆでたりすることでカリウムを除くことができます。生の野菜を避けるという指導はカリウムを除いて野菜を摂取するために行っているのです。
しかし茹でたからといって大量に野菜を摂取していいというわけではありません。野菜を茹でこぼしすると、葉物野菜はかさが減ります。今まで摂取した量と同じかさの野菜を摂取しようとすると、かえってカリウムを多く摂ってしまっていることもありえます。野菜は生の状態で量って1日300gを心がければ生野菜も食べることができます。

リンの制限

リンはさまざまな食べ物に含まれています。リンを過剰に摂取するとカルシウム欠乏を引き起こしてしまう可能性があります。
リンは体内でカルシウムとバランスをとっています。リンが増えれば血中カルシウムが減少してしまいます。反対にカルシウムが増加しリンが減少すると衰弱や食欲不振、倦怠感などの症状が起こることがあります。

その一方でリンの過剰摂取は腎機能の低下をもたらすことがあります。腎臓病が進んでくるとそれ以上腎機能を低下させないようリンの摂取を制限することもあります。

リンは通常の食事をしていれば過剰摂取になることはありませんが、偏った食事をしてしまうと過剰摂取してしまうこともあります。
リンが多く含まれているのは豚レバーやシラス干し、乳製品、インスタント食品やスナック菓子などです。これらの食品を過剰に摂取してしまうと骨にカルシウムが足りなくなってしまいます。

必要エネルギーの摂取

腎臓病のときの食事は、上記のように摂取量を制限しなければなりませんが、その一方で過剰に食事を制限するとエネルギーが足りないという状態にもなりかねません。
たんぱく質やカリウム、リンなどをあまり摂取しないようにしてしまうと、同時にエネルギーの摂取量が非常に少なくなってしまう可能性があるのです。

カロリーは人間が生きていくうえで不可欠なエネルギーです。熱をはじめさまざまなものに変わっていきます。内臓を動かす、体温を保つといった不随の運動にもエネルギーが日々消費されているのです。そのため何もしなかったとしても生きているだけでエネルギーを消費していきます。

人間の体はエネルギーが不足すると、すでに体内にあるたんぱく質を分解してエネルギーに変えることによって生命活動を維持していきます。この場合、たんぱく質を摂取したのと同じように分解が行われるため、尿素、窒素が発生し、結果として腎臓の負担が増加してしまうのです。そのため、腎臓に負担をかけないためにもたんぱく質は制限しながらも、必要なカロリーは確実に摂取するという食事のコントロールが必要になるのです。

水分の制限

腎臓病の症状が進んでくると水分の制限も行うことがあります。腎臓の働きのひとつとして水分を体外に排出するというものがあります。腎機能が低下してくると、水分の対外排出機能が低下することもあり、塩分の過剰摂取と同じように腎臓に負担をかけることになりかねません。そのため体外に排出された水分と摂取した水分ができるだけ近くなるよう、水分の摂取をコントロールする必要があります。

食事のほかにも気を付けてほしいこと

腎臓病の進行を遅らせるためには、内臓の負担を減らさなければなりません。そのためには食事以外にも生活習慣として以下のようなことに注意しなければなりません。

  • 規則正しい生活をする
  • 食後20分ほど、横になって休む
  • 長時間の労働は禁止
  • 風邪など引かないように注意する
  • 翌日まで疲労が残ることはしない
  • 激しいスポーツなどは短くても禁止

規則正しい生活をする

睡眠、食事などの時間を正しくとるようにすることは病状を進行させないうえで大切な要素です。
睡眠の乱れは、ホルモンの乱れや内臓への負担につながります。また食事の時間が安定しないと消化吸収に関する内臓に負担をかけることになります。
夜更かしはしないようにする。食事はきちんと三食とるようにする。あたりまえと言われていることですが、生活習慣が規則正しいかどうか、きちんと見直してみましょう。

食後20分ほど、横になって休む

食後すぐに横になるのは行儀が良くないと言いますが、消化のためには良いことです。人間の血液は常に全身を全力で動かすようにはできていません。運動しているときには筋肉に、思考をしているときには脳に、食後には胃腸に血液が集中し必要な作業を行っているのです。
食後すぐに運動をしてしまうと、血液が筋肉に集中してしまい胃腸の血流が減少します。胃腸に十分な血液がいかなければ、消化に時間がかかってしまい胃腸などの内臓への負担が大きくなるのです。そのため他の部分に血液が行かず、胃腸だけに血液が集中できるよう横になって安静にすることが大切なのです。
ただし、横たわったときに睡眠をとってしまうと内臓の働きが鈍くなってしまうため、負担を軽減するためにも横になっても眠らないようにしましょう。

長時間の労働は禁止

八時間を超える労働や夜勤などはできるだけ避けるようにします。夜勤や夜遅くまでの勤務は睡眠時間や食事時間がずれてしまうほか、通常の生活リズムとは違うため、それだけ体や内臓に負担をかけてしまうことにもなりかねません。

風邪など引かないように注意する

風邪などの病気を引いてしまうと、免疫などの機能が働くためそれだけ体に負担をかけることになってしまいます。また多量の発汗などで食事のコントロールなどが難しくなってしまうため、普段から特別病気には気を付けるようにしましょう。

翌日まで疲労が残ることはしない

疲労が残るとその回復のためにエネルギーや栄養などが使用されることになります。また筋肉に大きな疲労があった場合には、その回復としてたんぱく質が必要になる可能性があります。

激しいスポーツなどは短くても禁止

激しいスポーツを行うと内臓に負担がかかるほか、回復にも大きなエネルギーを使うことになります。どのくらいの負荷が「激しい」に当てはまるかは、その病状にもよりますので、運動を行う機会がある場合や運動を行いたいと考えている場合には主治医の方に相談をするようにしましょう。

食後、横になって休む以外の項目はどれも病気をしている人であれば当然のことかもしれません。腎臓病は一度発症してしまうと、腎機能が回復することは少ないため、それ以上症状の進行を抑えることを目的として治療を行います。
長く腎臓病と付き合っていくために、食事や生活など無理なく毎日続けていけるよう生活スタイルを確立していく必要があるのです。

腎臓病の方にとって食事が非常に大切なことはここまでお話しさせていただいた通りですが、実際に毎日の食事の中で栄養素の計算や調味料の計量などを長い間続けていくのは非常に難しいでしょう。また、そうした制限の中で毎日の献立を考えていくのも食事を用意する方からすると大変でしょう。

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