糖尿病の歴史

糖尿病の歴史はとても古く、最古の記録はBC1500年頃の古代エジプトのパピルス エベルスに糖尿病の記載と思われる文章が認められます。また、紀元1世紀のころローマの医師でアレタエウスが、糖尿病の症状について詳細に記録しています。
今から3500年前、エジプトのエベレスパピルスにある「多量 の尿を出す病気」という記述からです。
日本では、1027年の平安時代、源氏物語の主人公光源氏のモデルとなったといわれる藤原道長が糖尿病で亡くなったことが知られています。日本史に登場した最初の糖尿病患者さんといっていいでしょう。


藤原実資の日記「小右記」にその記述があります。「のどが乾いて、水を多量 に飲む」、「体が痩せて、体力がなくなった」、「背中に腫れ物ができた」、「目が見えなくなった」という道長の病状が書かれています。下の写 真の紫式部日記絵詞に描かれている道長の体型はまるまると太っていて、その当時の貴族の贅沢な食生活をうかがい知ることが出来るでしょう。 近世まで、糖尿病は死に至る恐ろしい病気だと言われてきました。 1869年、ドイツの病理学者パウル・ランゲルハンスが膵臓にある小さな細胞を発見し、後にランゲルハンス島と呼ばれるようになりました。

1889年、ドイツの医師オスカー・ミンコフスキーとフォン・メーリングがイヌが膵臓を摘出することで重い糖尿病にかかることから、糖尿病は膵臓の病気であることを証明しました。 さらに、1901年には、アメリカの病理学者ユージン・オピーが糖尿病患者の膵臓が退化していることから糖尿病は膵臓内にあるランゲルハンス島不全によることを報告しました。
この頃から糖尿病の治療に関する膵臓の内分泌物を抽出する研究が、各地で行われるようになりました。
1922年、長い間、糖尿病の原因は解明されず治療法のない不治の病とされていましたが、カナダのトロント大学で開業医のフリデリック・バンティングと医学生のチャールズ・ベストがインスリンを発見しました。

糖尿病の犬に膵臓から抽出した精製物を注射したところ血糖値が下がり糖尿病が良くなりました。この物質をインスリンと命名したのです。この発見によりバンチング博士はノーベル医学賞を受賞しました。1979年には遺伝子組み換え技術でヒトインスリンが容易に製造されるようになり、かつ安全に製造できるようになりました。
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